• 代表・奥山

ジビエ時評 (4) 観光に欠かせない「食」・・・出石に学ぶ

「観光おこし」は「食おこし」であると言っても過言でない。


ジビエではないが、格好の見本となる実例を紹介する。兵庫県豊岡市の「出石そば」である。出石は山陰本線豊岡駅からバスで南東30分のところにある。2005年に豊岡市に吸収合併された。


旧出石町は、古くから絹織物の産地として栄えた城下町だった。時勢に取り残された昭和42年(1967)、観光に活路を見出そうと有志たちの活動がスタートした。


城址の櫓の復元が最初の大事業だった。所要資金2,300万円は全額町民の寄付でまかなわれた。同時に取り上げたのが「食」であった。「そば」しかなかろうということは誰でも思いついたが、当時町内にはシーズン限定の2軒しか店がなかった。


「出石そば」は宝永3年(1706)、信州上田から移封した城主がそば職人を帯同し、そば好きの自身と重臣たちが食べるだけのそばを栽培し打たせていたのが城下に伝わったことに由来する。



こんにち人口1万人の町に40軒の「皿そば」の店があり、年100万の観光客が訪れている。その間、出店奨励、原料そば増産、イベントによるPRが根気よく続けられてきた。


観光事業を取り仕切っているのは旧出石町観光協会を母体とする㈱出石まちづくり公社で、事業内容は観光客の誘致・受入れ(情報の収集と発信を含む)、特産品の生産と販売、各種イベントへの参加、貸店舗や駐車場の管理運営などである。


合併によって資本金9,800万円のうち2,000万円の株式を引き継いだ豊岡市は、財政支出どころか、年4%の配当を得ている。



学ぶべきことを簡潔に表せば「自助・自主・自律」となろう。


ジビエに関して、もろもろの事業を提案すると、たいていそのまま行政に丸投げされる。公共性もあるため起業資金を補助金に頼るのはやむをえない面もあるが、そのあと何もかも税金に依存する「補助金中毒」には注意しなければならない。(2019年6月)



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