• 代表・奥山

ジビエ時評 (2) 目をそむけては通れない「不都合な現実」

ジビエ食文化が根づきはじめた。「日本ジビエ」が世界に誇れる食文化に育っていくためには、どうしても避けることのできない関門がある。われわれはいま厳しい試練に直面しつつある。


ウシやブタなどの一般食肉とシカやイノシシなどのジビエ肉との取り扱いの違いを整理するとつぎのようになる。


一般食肉が屠畜場法および食品衛生法にもとづく認可施設における「有資格検査員による食用適否の判定」が必須であるのに対して、ジビエ肉はこれを要しない。


ジビエ肉は、野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針などに基づく処理施設における事業者に食用適否の判定が委ねられている。

実際問題として、ジビエ肉の「密殺・密流通」や「食中毒」の可能性はないだろうかと問うと、「あります」というのが当事者たちの正直な答えである。


このような中、2018年9月、岐阜県で豚(とん)コレラが発生した。人間に感染することはないものの、飼育農家は壊滅的打撃を受けている。間の悪いことに、この時期発見されたイノシシの死骸からコレラウイルスが発見された。ブタ~イノシシ~人間のあいだの複雑な接触が感染防止を困難にすると考えられている。  


その結果管理不全のイノシシが標的となり、「イノシシは怖い」という単純過剰な思い込みが拡大すし、シカをはじめジビエ一般に及ぶおそれが懸念されている。


この機会に懸案の課題を一つ加えると、野生鳥獣の処分残渣の始末がある。そのほとんど(データ不在)が不適正ないし違法に処理されており、環境汚染や病原菌などの伝播をもたらしているのが現実である。


「不都合な現実」から目をそむけたり、課題を先送りにしてはならない。違法や不当を排除する勇気をもとう。つらい、苦しい境遇に立ち向かわなければ、いつまでたっても明るい未来は開けない。(2019年4月)

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